今やイケメン韓流スターとして知られるユ・スンホ(兪勝豪)の最高の作品は、九歳の時のデビュー作「家へ」です。彼が幼い時分でもどれほど都会っ子だったかは、田舍での生活に気落ちする演技のリアルな表情を見るだけでも感じられます。「家へ」は、最近作られた韓国映画の中では非常に珍しい存在です。スター級俳優が出演せず(専門俳優自体がほとんど出演せず)、スローペースで、強烈なドラマ性もありません。それにもかかわらず、2002年上半期最高の興行成績を記録しました。それはたぶん、この映画がもっとも韓国的な田舍の風景を描いていると同時に、万国に共通な情緒をも表しているおかげだと思います。
「家へ」は、ユ·スンホ演じる幼いサンウが、不満顔で母に手を引かれて山里村に到着する場面から始まります。情況を見ると、サンウはシングルマザーの母親と一緒に都会に住んでいましたが、母の事情で仕方なく田舎の祖母と暮すことになったようです。サンウは初めて見る田舎の風景と、テレビもないわらぶき屋根の小屋が嫌でたまりません。一人暮しの祖母は腰がかなり曲がっていて、喋ることも出来ません。サンウは祖母を「馬鹿」と呼んで意地悪な文句を投げつけます。「フライドチキンを食べたい」と駄駄をこねるサンウに、祖母は鶏をさばき水炊きを作ってやりましたが、サンウは「なんだ、こんなもの」と文句をつけます。
「家へ」では、観客を驚かすような事件は全く起こりません。しかし、この映画が終わる頃には、だれもが目頭に熱いものを感じてしまいます。この世の全ての人々に祖母という大事な存在があるからでしょう。女性の権利が拡張したおかげで、このごろは父方と母方の祖母、どちらの立場もほぼ対等になってきました。しかし、少し前までは、母方の祖母というのは、自分の娘を他人の家に嫁がせた後は、娘の生活にあまり関与することができなかったのです。
韓国では、父方の親を「親祖父母」と呼びますが、母方の親は「外祖父母」と呼びます。また、母親の母親は「ウェハルモニ(外祖母)」で, 母の実家は「ウェガジブ(外家)」と言われています。男性中心の家父長文化が支配的だった過去には、「親祖父母」と一緒に暮すことが一般的でしたし、「外祖母」は時折会いに行く人でしたので、懐かしさの代名詞になりました。「外祖母」という存在はなぜか胸がじいんと熱くなる感じがする存在です。自分の母を偲ぶ母の心が子供にも遺伝するからかも知れません。それで、「家へ」は「外祖母」と外孫の語りを描いているのです。
外孫の立場からみたら、母を彼女の母親から奪って来たとも言えましょうか。それでも、孫を愛さない祖母はいません。私は若い頃、休みになると母の実家に行き、「外祖母」とは一年に必ず二度は会っていました。「外祖母」はいつも私を「私の初恋」と呼びました。うちの母は7人兄弟の長女なので、私が祖母にとって初めての孫だったのです。常に小まめで、少女のように笑っていた祖母が、息を引き取るまで認知症で苦労していたことは胸が痛む経験でした。
「家へ」で祖母の役を演じたキム・ウルブンさんは、演技とは全く縁のなかった方でした。(たぶん、そういう理由で、台詞を話さない役として演じたのかも知れません。) キムさんの顔には、きれいに老けた女優さんからは見ることのできない深いしわが刻まれています。この映画を撮る時、演技をしたくないとわがままを言うユ・スンホに、キム・ウルブンさんは芋やとうもろこしなどをおやつとして与えながら、本当の孫のように接していたと聞きました。
「家へ」は、1964年生まれのイ·ジョンヒャン(李正香)監督の二番目の作品です。韓国の「映画アカデミー」出身である彼女は、1998年自分の脚本で演出したデビュー作「ミスルグァン·ヨプ·ドンムルウォン(美術館の隣の動物園)」で、チョンリョン(青竜)映画祭、デジョンサン(大鐘賞)映画祭などいろいろな映画祭で新人監督賞を受賞しました。「家へ」は400万人以上の観客を動員し、大鐘賞映画祭で最優秀作品賞、脚本賞、企画賞、女優新人賞(キム・ウルブン)を受けました。イ監督は今年、ソン・ヘギョ(宋惠敎)主演の「オヌル(今日)」という映画を作って、好評を博しました。暴力と下品な言葉があふれる最近の韓国映画の中で、「家へ」がおさめた成果は輝かしく、意義も深いものです。韓国の映画が見たい外国人に私が一番お勧めできる映画が、まさにこの「家へ」です。この映画の成功は、「映画が成功をするためには、我々が望んでいながらも、自覚していないその何かを捜し出さなければならない」という点を悟らせてくれます。<終り>
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